コラム

インドのEコマース市場~Eコマースは大都市から周辺へ拡大中

Published on
May 13, 2024

ž   パンデミックを経て、グローバルでデジタル利用が増加する中、インドのデジタル利用は急伸している。インド政府の掲げる「デジタル・インディア」政策により、行政や金融のデジタル化が進んできたが、ロックダウンの影響で、人々が在宅を余儀なくされ、買い物のオンライン化が従来のファッションや家電から、日用品や食料品にまで拡大してきた。

ž   India Brand Equity Foundation(IBEF)によると、Eコマース市場全体の流通総額は、2020年度の462億米ドルから、2030年には約8倍の3,500億米ドルに達すると予測されている。中でもTier 2(人口100万~400万人未満)都市およびTier 3(同50万~100万人未満)都市へのEコマースの急速な拡大が、この伸長を後押しすることが言及されている。

ž  最近のEコマースは、企業・消費者間取引(B2C)にとどまらず、企業間取引(B2B)、消費者直接取引(D2C)、消費者間取引(C2C)、消費者・企業間取引(C2B)に至るまで、さまざまな分野に広がり、特にD2CやB2Bにおいて、近年、大きな成長を遂げているという[i]。小売市場におけるオンラインの存在も拡大しており、2019年には4.7%だったものが、2024年度には10%を超えると予測されている。

ž  Eコマースにおける小売の商品セグメントシェアでいうと、金額の大きさから、最も多いものは家電製品(52%)、次いでファッション(20%)だが、食品・FMCGが11%でこれらに続いている(2021年)。

ž  一方、Statistaが2022年11月に行った調査では、過去12ヶ月にオンラインで購入したものとして、化粧品・ボディケア用品が40%、食品・飲料が36%と高い数字を示しており、オンライン購入の機会がより日常化しつつあることがうかがえる。

ž  最近のトレンドとしては、AIによるパーソナライズ化や顧客体験の強化、ソーシャルメディアとEコマース・プラットフォームを組み合わせたソーシャルコマース、透明性の高い情報と物流の効率化による持続可能なショッピング、オムニチャネル戦略、大都市からTier 2、Tier 3都市への拡大が挙げられる[i]。

ž  インド政府も、インド全体のEコマース利用を促進するため、国内の公共調達用オンライン・プラットフォーム「Government e-Marketplace(GeM)」やオープンソースを前提とした国内統合型Eコマースネットワーク「OpenNetwork for Digital Commerce(ONDC)」等の枠組みも立ち上げた。GeMを通した2023年度の年間公共調達の総額は240億米ドルに到達。また、ONDCは、2023年5月時点で国内236都市に事業を拡大し、3万6000以上の加盟店を増やしている[ii]。

ž  ECプラットフォームも、Amazon, Flipkartのような総合ECから、Nykaa、Tata 1MGなど、美容やヘルスケアの専門ECのほか、D2Cブランドも数多く登場している。大手企業も積極的な投資を行っており、Amazonは2023年6月にはインド向けに手頃な価格の新会員プラン「Amazon Prime Lite」を開始[iii]、同年12月にはその金額を年間999ルピーから799ルピーに値下げした[iv]。Flipkartは2024年3月、Axis銀行と提携し、独自の決済サービスFlipkart UPIの導入を発表している[v]。

ž  そういった中、個人や小規模事業者がEコマースに容易に参入できるプラットフォーム、B2Bのいわゆる調達―販売マッチングを行うプラットフォームなど、ユニークなものが登場している。

 

Meesho[vi]

ž  誰もが手数料なしでEコマースに参加できる個人・小規模事業者向けプラットフォームを提供するユニコーン企業。Meesho Mallは、全国規模もローカル規模も含めて500以上のブランドと提携しており、2023年下半期で約2,000万件の注文を処理し、その75%以上はTier 2以上の都市からだった。アプリ分析企業data.aiによると、Meeshoは2023年にインドで1億4500万件のアプリダウンロードを記録し、インドで第1位のショッピングアプリとなった。

ž  2023年10月以降、Meeshoは約2万5000の非GST(物品サービス税)販売者を受け入れたと発表している。これには、インドのGST審議会が2023年7月、売上高が物品の場合は400万ルピー未満、サービスの場合は200万ルピー未満の小規模事業者に対し、Eコマースのプラットフォームを通じて州内供給を行う場合はGST登録を免除することを決定し、10月1日から施行されたことが背景にある。戦略コンサルティング企業RedSeer Strategy Consultantsの最新レポートによると、インドには推定8,500万社の中小・零細企業が存在するが、現在、オンライン領域で事業を展開しているのは約150万社に過ぎないという。Meeshoは、2027年までに1,000万社の中小・零細企業を取り込み、彼らのオンラインでの成功を支援することを目標に掲げている。日本のソフトバンクも同社に投資している。

 

Udaan[vii]

ž  電子機器、ファッション、家電製品、果物・野菜、日用消費財、薬品、玩具、雑貨など、さまざまなカテゴリーのメーカー、卸売業者、貿易業者、小売業者をデジタルマーケットプレイスでつなぐことを目指し、B2BのEコマース・プラットフォームを提供するユニコーン企業で、小規模な製造業者、農家、ブランド企業が、支払いの安全性を確保しながら、低コストで全国に商品を販売することを可能にする。

ž  仕組みは、小売業者が商品を選択し、卸売業者、ブランド、メーカー、農家などの売り手に注文、売り手は商品を梱包し、udaanExpressという物流サービスを通じて発送、クレジット取引でない限り、配達時に代金を回収する。

ž  アプリによるリアルタイムのマーケット分析など、プラットフォームのSaaSの提供により、メーカーやブランドはデータに基づいた販売決定や試験販売を行うことができる。さらに、アプリベースの価格設定システムにより価格管理を強化し、商品リストの公開やアプリ内広告でターゲットを絞り込み、最適な小売業者へのリーチを促進している。

ž  現在は、国内900以上の都市で、300万人以上の登録ユーザーと2万5000~3万人の小売業者のネットワークを持ち、毎月450万件以上の取引が行われている。

[i] https://www.ibef.org/industry/ecommerce

[i] https://economictimes.indiatimes.com/industry/services/retail/major-e-commerce-trends-that-can-shape-the-industry-in-2024/articleshow/106358005.cms

[ii] https://www.newindianexpress.com/business/2023/Jan/31/gem-ondc-aa-framework-driving-e-commerce-in-indiaeconomic-survey-2543051.html

[iii]https://www.the-sun.com/tech/8379798/amazon-prime-lite-what-how-save-money/

[iv]https://business.outlookindia.com/news/amazon-prime-slashes-prices-for-lite-membership-a-comparison-of-e-commerce-giants-subscription-programs

[v]https://inc42.com/buzz/flipkart-partners-with-axis-bank-to-hop-onto-upi-bandwagon/

[vi] https://brandequity.economictimes.indiatimes.com/news/research/tier-2-and-tier-3-focus-strategy-helped-meesho-outshine-amazon-flipkart-and-myntra-report/106769290
https://www.business-standard.com/companies/news/softbank-backed-meesho-adds-nearly-25-000-non-gst-sellers-in-2-months-123121501111_1.html
https://www.meesho.io/blog/meesho-posts-continued-revenue-growth-records-77-for-fy23-followed-by-37-in-h1-fy2

[vii] https://www.inventiva.co.in/trends/unicorn-companies-2024/
https://udaan.com/about-us

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