インドの物流市場は、2018年時点で1,600億米ドル規模。2020年には2,150億米ドルに到達する見込みだ。世界銀行が発表している物流パフォーマンス指標(LPI)のランキングでも、2014年の54位から2018年は44位と順位を上げており、市場の拡大と整備が進んでいる。物流市場には2,200万人が従事している[i]。
新型コロナウイルスの影響で物流需要が高まったことを受け、2020年から24年にかけて、年平均伸長率は10.7%と予測されている[ii]。
既存の物流市場をテクノロジーで改革しようとするスタートアップの台頭も顕著だ。その投資額も年々伸びており、2014年の9,338万米ドルから2019年は10倍超の9億4273万米ドルとなっている。特に伸びが著しかったのは2015年(前年比4倍以上)で、その後、横ばいが続いたが、2019年には前年のほぼ2倍と大幅な伸びを示した[iii]。
2020年は新型コロナウイルスの影響で、スタートアップへの投資は前年より半減、前々年と同水準の4億2,520万米ドルにとどまったものの、投資は物流需要が急増したと考えられる20年前半に集中、アーリーステージのスタートアップが総調達額の45%を占めるに至った[iv]。
インドの物流市場では、IT化が急速に進んでいる。政府もデジタル化によるペーパーレス化・キャッシュレス化を推進している。
貨物運送状の電子化:
従来は物品移動に必要であった税務当局が発行する貨物運送状が、2018年より電子化され、E-Way Bill(電子貨物運送状)となった。州間・州内問わず、5万ルピー以上の価値のある物品移動(販売に伴う移動のほか、返品、倉庫間移動も含む)に適応される。ただし、E-Way Bill発行が免除されている物品(食品など)、州内の10km以下の移動、税関管轄区域(空港、港など)からの移動、エンジンなどの内燃機関を伴わない手段を用いた移動は、適用外となる。
E-Way Billには有効期限があり、物品の移動距離に応じて、100km以内の移動である場合には発行から1日(発行後24時間)、100Km以上の移動の場合には、100Kmごとに追加で1日の有効期限が付与される[v]。
高速道路料金の自動徴取によるキャッシュレス化:
国内物流の8割がトラック輸送といわれているが、物流車両の大半がGPSを搭載していないため、位置把握が難しかった。そこで、インド政府は高速道路の自動料金徴収システム「FASTag」の利用を推奨。利用料金が割引される特典に加え、RFID(Radio Frequency Identification)技術により、ゲート通過ごとの自動引き落としがドライバーの携帯電話とリンクするため、GPSを搭載していない車両でも100kmごとに位置を把握できるようになった[vi]。
FASTagは2021年1月から義務化されたが、以前からの順調な導入進捗の結果、義務化同月ですでに80%以上の通行料金がFASTagで徴収されているという。これは、車のフロントガラスに貼り付けられるステッカーとなっており、各料金所、提携銀行指定の販売所の他、Amazonなどのオンラインでも購入が可能であり[vii]、入手のしやすさも普及の一助になっていることが推測される。
2015年創業の物流サービス企業。トラックを利用したい顧客と、トラック運転手および車両をつなげるプラットフォームを展開。対象分野は小売、FMCG(Fast Moving Consumer Goods:日用消費財)、EコマースといったB to B物流から、一般世帯の引っ越し、家具の購入といった日用使いまで幅広く、車両も軽トラックから大型車両まで、さまざまな車種を揃える。
三菱商事、三井住友海上キャピタルといった日系企業も出資している。2020年2月にはウェブおよびモバイルアプリなど、ソフトウェア開発のスタートアップ、Pixlcodersを買収。2021年までに10万台のトラックネットワークを確立するとしている。
2017年創業、国際海運貨物分野で事業を展開。オンライン管理を導入することで効率化を実現した。新型コロナウイルス対策によるインド全土のロックダウン(都市封鎖)で物流ネットワークが限定的になるなか、2020年4月にはモバイルアプリ「On The Go」をローンチ。携帯電話から、場所と時間を選ばずに貨物管理ができるようになった。2019年11月には400万米ドルを調達している。
2015年創業のハイパーローカルデリバリーサービス企業。パートナーである二輪車のドライバーを介して、顧客が必要とするさまざまな商品を短時間で手元に届けるデリバリーサービスを展開している。展開地域はベンガルル、チェンナイ、デリー、グルガオン、プネ、ハイデラバードの6都市。同社のスマホアプリを通じて購入できる商品は、生鮮食品を含む食品・飲料、飲食店の料理、スーパーや商店の日用品、ペットフード、ギフト製品、そして薬店の医薬品まで、多岐にわたる。
競合他社はサービスを利用するための最低注文金額を設定しているが、Dunzoにはそのような制約がなく、あらゆるモノを注文から1時間以内に配達できるのが強みだ。
2014年バンガロール創業のAIを活用した配送ルート等の計画設計支援ソリューションを提供。400以上都市に展開。顧客はEC、小売、3PL、FMCGなど多様で、ネットスーパーBigBasket、物流のBlueDart、FMCGのネスレ、ヒンドゥスタンユニリーバなど大手とも提携している。ロジスティックワークロード全般の自動化を実現する。2017年にリクルート・ホールディングスも投資子会社を通じて同社に出資。2019年5月にはFalcon EdgeCapital、TigerGlobal主導のシリーズBで、2,200万米ドルを調達した。
2019年グルガオンにて創業。デリーNCRでハイパーローカル配送を手掛ける。アプリベースサービスは、申し込んでから60分以内のピックアップを保証しており、エクスプレスデリバリーでは1-4時間での配送を実現している。Webベースのサービスは、特定集荷場所から複数個所への配送を行うというもの。
創業から6か月で35,000の顧客を獲得、うちリピーター率は50%を超えるという。現在、衛生関連ブランドや食肉配送、クラウドキッチン、ベーカリーなどを中心にサービスを提供している。
売上は右肩上がりであり、2020年10月にはムンバイ及び近郊都市への進出計画を発表、ジャイプール、アーメダバードへの拡大も計画しており、将来的には南インドも視野に入れている。