South Asia Pvt. Ltdのレポートによると、インドの2022年第1四半期の住宅販売数は、前四半期比約13%増の7万戸超と急増、販売数は年間ベースで約40%と大幅に回復した。2022年度は住宅供給・販売ともに好調に推移する見込みであり、政府による継続的な住宅供給政策の推進(主に低・中価格帯住宅)、経済活動の回復に加え、利用しやすい金利の住宅ローンなどが後押しすると予想されている。
2021年第4四半期に比べ、ハイエンド・高級住宅の売上が増加、高額物件に対する高額所得者や在外インド人の改めての関心の高まりがあるという。2022年第1四半期の住宅販売の都市構成比は、プネーが27%と最大、次いでデリーNCR(21%)、ムンバイ(20%)、バンガロール(14%)と続く。大都市部を中心に、在宅ワークやホームスクールにも対応できる物件が人気となっている[i]。
Godrej Properties Ltdの調査によると、パンデミックを経て、より健康やウェルビーイングが重要視され、住宅にもカスタムデザインやスマートホーム等の設備・ソリューションの導入により、安全性や快適性を実現しようとするようになってきているのが特徴だ。自宅で仕事や学習をする機会も増え、運動や趣味の空間や、より快適な環境等、家族それぞれのニーズを満たすことが必要になり、よりよい条件を求めて、賃貸から住宅購入にトレンドは移行しており、ミレニアル世代の住宅購入も増加傾向にある。これら世代を中心としたインターネット利用やデジタルシフトにより、不動産テックのプラットフォーム等を使った取引も増加している[ii-1] [ii-2] [ii-3]。
インドのホームオートメーション産業も成長がみられる。Research and Marketsのレポートによると、2021年から2027年の間に15.62%の年平均成長率で成長する見込みだ。2021年の市場規模は36億米ドルに達し、2027年には86億米ドルになることが予想されている。インドのホームオートメーション市場の中では、スマートフォンユーザー増加に伴い、アプリからコントロール可能なスマート家電の需要が特に高まると予想されており、そのほかホームエンターテインメント、セキュリティ、コントロール・接続、室内環境コントロールなども拡大していく。特に需要が見込まれるのは、住宅増が著しい大都市が中心となっている。スマートホーム需要は、若い高所得者層がけん引しており、2021年のユーザー比率は高所得者層が39.4%、25~34歳は39.3%であった[iii-1] [iii-2]。
インドのホームオートメーション市場では、Schneider Electronics’ Home Products、Philips Automation Solutions、TIS Control Home Products And Solution、Legrand Home Automation System、Crestron Automation Solutions等の欧米系グローバル企業の製品が優勢[iv]だが、インドのスタートアップも参入してきている。2012年創業のMEMIGHTY Inventionsは、IoTの研究開発、オートメーションや省エネソリューションを提供しているスタートアップである。ホームオートメーションIoTブランド「mightyHOME」の展開の他、スマートIoTタイマー&街灯、エアコン用IoTエネルギーコンサーバ、省エネのためのスマートモーションセンサー、IoT自動エネルギー検針システム、スマート温度スクリーニング製品(コロナ対策)、IoT遠隔監視付きソーラーパネル自動清掃ロボットも手掛けている。グジャラート州政府からの受賞、インド政府のスタートアップ・インディア・キャンペーンのIoT部門でも認定されており、1万人以上の学生が参加するエンジニアリングNGOも運営している[v-1] [v-2]。また、台湾のFoxconnは、インドのホームオートメーション・スタートアップWiZN Systemsに出資している[vi]。
日本企業では、インドでの住宅への関心の高まりに伴い、パナソニック等がショールームの設置、工場の増設等を進めている[vii-1] [vii-2]。
パナソニックは2021年11月、システムキッチンなど住宅設備事業の売上高を2030年度に前年度比2割増に引き上げるとの発表にともない、インドで展開する販売店数を現状の11店舗から24年中に約40店舗に増やす方向を示した[viii]。
オンキヨーグループは、インドにおけるカスタムインストールビジネス拡大のため、ホームオートメーションやネットワークシステムプロバイダーとして大手のWirepath Home Systems, LLCの孫会社CONTROL4 APAC PTY LTDと2021年3月にインドにおけるIntegraブランド製品の販売代理店契約を締結した。顧客の好みに応じて天井や壁にスピーカーを埋め込んだり、カーテンや大型スクリーンやテレビを電動で収納や開閉したりするホームオートメーションをビルトインさせるカスタムインストール事業の強化を図る[ix]。
住宅設備全般においてはGodrej[x]をはじめとする大手インド企業も注力している。Crabtreeは、インドの電化製品大手であるHavells India Ltd.が所有するインドのホームオートメーションブランドである。デザイン性も考慮したスイッチ、カメラ付きインターフォンとともに、アプリによるホームオートメーションも提供している[xi]。Build Trackは、大手建設業者、企業、公共機関を介して、インド全土の住宅、アパートメント等のオートメーション化を展開している。スイッチ、カーテン、ブラインド、リモートドアロック、エアコン、メディアデバイス、カメラ、テレビドアホンなどをスマートアプリケーションにより制御、煙、ガス漏れ、ドアからの侵入などの監視も可能だ[xii]。
ホームオートメーション体験店舗の開設も相次いでいる。コングロマリットTata Groupの空調・家電ブランドVoltas & Voltas Bekoは、2022年1月、スマートホーム体験施設をムンバイの高級住宅地に開設した。デリー、バンガロールに次いで3番目の施設で、コンセプトごとの体験ブース、廃材などをリサイクルしたサステナブルゾーン、コネクテッドホーム家電を統合するHomeWhizプラットフォームによる「スマートホーム」体験等を提供する[xiii]。Schneider Electricは、カルナタカ州の中堅都市マイソールに、同市初の「Wiser」スマートホーム体験ストアを2022年4月に開設した。Wiserは、既存の住宅にシームレスに統合できるように設計されており、再配線が不要で、新旧の住宅を問わず、4時間以内にスマート化することが可能という。また、この体験センターは、エネルギー効率のベストプラクティスのために協力し合う市民、企業、機関のコミュニティの形成を目指し、ホームオートメーションのエコシステム全体を発展させ、業界にも貢献することを目指す[xiv]。