コラム

インドのPLI政策ー世界の工場を目指すインド、脱中国の企業需要を取り込みへ(2021年4月時点進捗のご紹介)

インド政府は、国内製造業振興を目的として、生産連動型インセンティブ(Production―Linked Incentive)スキーム(以降PLIスキーム)を2020年より開始しており、その品目をこの1年間で13項目に拡大した。

Published on
Jun 7, 2021

第一弾として2020年4月に開始された、1) 携帯電話・特定電子部品、2) 重要な出発原料・医薬品中間体・有効医薬品成分、3) 医療機器製造 の3分野に続き、同年11月には10分野の追加が発表され、うち6分野がすでに承認を得ている[i]

このPLIスキームは、日本も含め数多く報道されているため、ご存じの方も多いと思われるが、基準年度から5年間、インドで製造された製品の売上増加額に対して、4~6%の補助金が付与される[ii]、というもので、非常にシンプルで計算しやすく、申請プロセスが簡易であることからも関心が集まっている。PLIスキームは、1) 特定の製品分野を対象とする、2) 安価な輸入品に対し、より効果的な競争を可能とするための非関税措置の導入、3) 製造業の競争力・持続可能性の向上のため、国内販売と輸出の融合、4) インド国内外からの投資を奨励することによる国内製造促進、の4つを目的として設計されている[iii]。インド国内企業だけでなく、外資系企業の製造業誘致も視野に入れており、2020年10月に、携帯電話・特定電子部品分野の第一ラウンドで承認された16社のうちの半数は外資系企業、また、今年4月に承認を得た電子・技術製品においては、海外投資誘致を積極的に行っており、グローバル大手企業へのアプローチを、大使館や業界団体など、様々な経路より実施、個別もしくはカンファレンス等での周知を図っており、スキーム内容についても、英語以外の日本語を含む8外国語にて提供している[iv]

【PLIの内容・予算と進捗(2021/4時点)】

出典:インド商工省リリース、JETROビジネス短信、Mizuho Country Focus等よりインフォブリッジ作成 [vi-1] [vi-2] [vi-3]

インド商工省より、今年4月に発表されたPLIの進捗状況から、いくつか紹介する。

  • 携帯電話・特定電子部品分野
    - 前出の第1ラウンドで承認された16社へのインセンティブは3,644億ルピー。当スキームの元、これら企業は5ヶ月で130億ルピーの投資、3,500億ルピーに値する製品生産を実施、追加雇用創出は約22,000人と報告されている。

    - 2020年11月に募集開始された第2ラウンドは2021年3月に受付を終了し、審査中。第2ラウンドについては、対象製品の基準年に対する販売増分にたいし、3-5%のインセンティブが4年間延長される。

    - このスキームの適用により、今後5年間で全生産量の6割以上が輸出、さらなる1,100億ルピーの追加投資、20万人の追加直接雇用、その3倍の間接雇用を生む、と期待されている。
  • 重要な出発原料、薬剤中間体、医薬品有効成分

    - 認可から今までの申請件数は、36製品に対し216社に上る。4月時点での承認社数は47社となり、その投資額は536.6億ルピー、1万2千人以上の追加雇用が見込まれる。認可された企業には国内・外資系の大手企業も複数含まれる。2029年度までに41製品を対象に進めていく。
  • 医療機器製造

    - 申請は28件受領され、うち14件が承認されており、その投資総額は87.4億に上る。外資系では、Siemens Healthcare、Wipro GE Healthcare、そして日本のNiproの現地法人、Nipro Indiaも承認されている。
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