コラム

インドのオンライングロッサリー市場 ―ロックダウンの影響からデジタル移行が急拡大、大規模資金調達実現による積極的事業投資が続く

Published on
Feb 4, 2022

新型コロナウイルスは、インドの小売業界にも大きな打撃を与えたが、昨今はその回復が数多く報告されている。グローバル調査会社Kearnyによると、インドの小売市場規模は、2019年の7,790億米ドルから、2020年は新型コロナウイルスの影響で減少したものの、2026年には1兆4,070億米ドル、2030年には1兆8,840億米ドルに伸長すると予測されている [i]

【インド小売市場規模推移(単位:10億米ドル)】

出典:IBEF「Retail Report(2021年11月)」よりインフォブリッジ作成

小売業界は、2021年より回復基調を見せており、インド小売業者協会(RAI)の発表によると、同年10月の小売売上規模は、前年同月比の34%増、新型コロナウイルス以前の19年同月に比べても14%の成長となった[ii]

特に成長の後押しとなったのが、食品・食料品セグメントであり、19年同月比の31%増、QSR(クイックサービスレストラン)セグメントにおいても29%増となった。また、スポーツ用品、宝飾品セグメントも順調に回復しており、それぞれ19年同月比26%、24%プラスとなっている。

これらの回復の背景として、食料品・グロッサリーのEC利用増、オンラインデリバリーの増加、スポーツ用品・宝飾品については、ロックダウンの反動によるリベンジ消費と、10-11月の祝祭シーズンの相乗効果があげられる。

食料品・グロッサリーのオンライン移行は、ロックダウンの影響が非常に大きい。ユーロモニターによると、インドの2020年のオンラインでの食料品・グロッサリー販売は80%伸長し、その金額は26億6千万米ドルに達したという。また、2025年には同市場が200-250億米ドルー現市場の最大10倍になるという予測も発表されている[iii]

食料品・グロッサリーのオンライン販売を行う企業は、現在多岐にわたっている。

【インドの主要オンライン食料品・グロッサリー】

出典:米国農務省(USDA)レポート「COVID-19 Accelerates the Growth of India’s Online Grocery Market(2021年5月)等よりインフォブリッジ作成

2020年度の食料品・グロッサリーECの売上のトップはBigBasketで341億8千万ルピーの売上、前年比43%増だが、マイナス42億4千万ルピーの損失となった。次いでGrofersが300億ルピーの売上、前年比88%増と大きな伸長を見せたが、こちらもマイナス63億7千万の損失。DMartのオンライン部門が34億5千万ルピーの売上、損失7億9千万ルピー、StarQuickを運営するFioraOnlineも、売上3億3千万ルピーに対し、損失2億1千万ルピー。

各社ともに売り上げは大きく伸ばしているものの、総じて損失になっているのは、プラットフォーム強化や認知向上のため、大きく投資をしていることが背景にある[iv]。これらプレイヤーに対し、大きな投資が集まっており、その潤沢な資金を使ったアグレッシブな戦略の結果と考えられる。

2020年4月の、FacebookによるReliance Jio Platfromへの57億米ドルの投資[v]が記憶に新しいが、この投資により、Jio Martのサービス強化・拡充が想定しているもよう、と報道されている[vi]

以降もオンライングロッサリー関連への投資が続いており、2021年5月には、TataグループがBigBasketの64%の株式を取得[vii]、2021年8月には、大手オンラインデリバリーのZomatoが、Grofersへの1億米ドルの投資を発表。この投資でGrofersはユニコーンとなり、Zomatoは2020年に参入しようとして失敗したオンライングロッサリー分野への再参入を目論む[viii]

Grofersはもともと、キラナとの連携によるファストデリバリーを強みにしていたが、2021年よりクイックコマースを強化、9-11月の3か月間でダークストアを200店舗までに増強。12月までに150をさらに追加し、合計350店舗までに引き上げる計画を発表[ix]、翌月12月に「Blinkit」とブランドを変更した[x]。報道によると、Zomatoはさらに5億米ドルの投資を行う可能性があり、ビジネス展開にさらに拍車がかかる可能性は高い。

JioMart、Grofersはいずれもキラナとの連携で、急速に事業エリアを拡大しているが、実店舗とオンラインの組み合わせによる、いわゆる「フィジタル」が、食料品・グロッサリー販売でもより重視されはじめている。店舗チェーン系も、スタートアップ等の買収でオンラインに参入、トップを走るBigBasketを追いかける形となっており、対抗するBigBasketは2021年10月、ベンガルールに1号店をオープン、同様の実店舗を他都市にも展開する計画を発表している[xi]。より小都市へのリーチや、ブランド視認性の上昇など、実店舗とオンラインの相乗効果を狙い、店舗チェーン系のオンライングロッサリーに対抗しようとしている。

こういったアグレッシブな事業拡大や転換は、さらに続くことが予想され、今後の展開から目が離せない。

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