コラム

インドレポート:インドのソーシャルコマース市場

市場概況 インドでも新型コロナウイルスの影響により、オフラインからオンラインへの移行が加速しており、Eコマースも例外ではない。以前からECサイトは多様化が進んでおり、Amazon.inやFlipkartといった総合ECの他、美容系専門サイトNykaaや、ベビー用品のFirstCry、家具専門のPepperfryなど、特定商品・サービスに特化したものも多い。最近ではソーシャルコマースも登場しており、特にWhatsAppといったメッセンジャーアプリの利用が浸透しているインドでは、SNSのソーシャルコマースへの活用も数多くみられる。

Published on
Nov 6, 2020

インドのEC市場は、2025年までに2,200億米ドルに達し、うちソーシャルコマースは、1,000億米ドルのポテンシャルがあるとみられている。また、Sequoia Capitalによると、インドのソーシャルコマースは700億米ドルの機会があり、今後10年間でインドのオンライン小売の15%から20%を占める可能性があるという[i]。2019年にセコイアが米調査会社ニールセンに依頼した消費者および中小事業者に対する調査結果によると、90%以上がWhatsAppを介して販売を行ったと回答、これはFlipkartを介して販売を行った割合の4倍以上を占める。FacebookやWhatsAppのグループチャットがこうしたコマースに利用されるケースは多く、購入経験率も、グロッサリーの7割以上をトップに、様々な商品カテゴリーで行われている。グループチャット形成の目的も、一般的な興味関心の共有、日常のコミュニケーションに次ぎ、55%が「セールのお知らせの投稿及びお金を稼ぐため」54%が「販売者・購入者の交流促進のため」と回答しており、SNSをうまく活用し、低コストでの顧客獲得につなげている、という。

出典:Sequoia IndiaがNielsenに依頼し2019年に実施した2,170の小規模事業者、1,561人の消費者対象に行った調査結果よりインフォブリッジ作成[i]

ソーシャルコマースについては、数多くのスタートアップがTier3,4といった小規模都市の、いわゆるアンオーガナイズドと呼ばれる非企業体の中小メーカー・サプライヤーの囲い込みを始めている。印調査会社Benoriの実施した調査によると、約120のソーシャルコマース企業がインドで現在活動しており、そのうちのトップ3がインド全土にわたる3,500万セラーのうちの2,200万セラーを押さえている、という[ii]。また、PayPalの「ソーシャルコマースレポート」によると、昨年1年間で、インドのソーシャルコマーススタートアップは合計1億米ドルを調達、主にTierII以降の小都市のリセラーが中心で、180万人の女性が80億米ドルに値する商品の売買を行っているという。そして2022年までにはソーシャルコマースにかかわる女性の数は3千万人になる、と予測されている[iii]。Eコマース企業がカバーしきれない地方都市や農村部などで、これらを補完するEコマースのひとつの手段として、ソーシャルコマースが注目されている。こういった動きから、非大都市におけるデジタル消費者行動分析等、新たな顧客開拓戦略を行う素地が構築され始めている、といえる。

ソーシャルコマースへの移行は、GEN Zまたはミレニアルと呼ばれる10-20代の若者世代が中心となり、Facebookといった従来のSNSから、Instagram, SnapchatといったショートビデオのSNSに移行していることも影響している。

以下に代表的なソーシャルコマースのスタートアップをあげる。

MeeSho[iv]

2015年創業、ベンガル―ル拠点。リセラー(個人・中小事業者含め)1千万強、5千都市以上をカバー。個人で不用品を売りに出すだけでなく、個人事業主や中小企業の場合、自身のファッション・ブランドの開設・販売が可能。2019年8月にはFacebookが6月に続く1億2,500万米ドルの新規出資を発表、資金調達総額は1億9千万米ドルに到達している。Meeshoは同社のプラットフォームだけでなく、ソーシャルメディアを通して売買できるようになっており、同社がシェアを拡大すればするほどソーシャルメディアの利用率も上がる仕組みで、Facebookからの大型投資を獲得した。

GlowRoad [v-1] [v-2]

2017年創業。創業者Sonal Vermaは、2008年に遠隔医療会社を共同設立、医師として地域医療に専念していた中、多くの専業主婦が商品再販ビジネスを営んでいることに気づき、当プラットフォームを立ち上げた。登録リセラーは600万人超、サプライヤーは2万強・展開都市は2千強。サービスリリースからの累計購入者数は1,800万人を超えたという。2019年4月、中国CDH Investments主導のシリーズBラウンドの資金調達で1,000万ドルを調達。

DealShare [vi-1] [vi-2] [vi-3] [vi-4]

2018年創業、ジャイプール拠点の共同購入型ソーシャルコマース。マスマーケット向けの日用品・食料品をディスカウント価格で提供。注文リンクを友人と共有することで、さらなる割引や特典が受けられる仕組み。大都市部以外の地方市場をターゲットとしており、複数のローカル言語で展開、また無料の宅配オプションや代金引換オプションを提供することで、農村部やアプリ等の利用に精通していない年代なども利用しやすい仕組みとしている。2019年9月時点の取引数は1日当たり1万件以上。Matrix Partners等から1,100万米ドルを調達。

BulBul [vii-1] [vii-2] [vii-3]

2018年創業のライブコマース。グルガオン拠点。旅行サイト・アプリMakeMyTrip、デートアプリTruly Madlyの共同創業者によって設立。ライブストリーミングで商品の特徴や説明を見ることができ、そこから直接ショッピングが可能。2020年7月、InfoEdge他VCから計870万米ドルを調達。

最新動向

今年4月、FacebookとRelianceは、Relianceの子会社であるECプラットフォームJioMartで、メッセンジャーアプリWhatsAppを介したグロッサリー類販売の試験販売を開始した。実施地域はムンバイ郊外都市であるナビムンバイ、タネ、カルヤンの3都市で、最初に特定の番号に”Hi”とメッセージを送るとブラウザ上のミニストアが開き、そこで日用品や食料品の買い物ができる仕組み。試験販売には1,200もの小規模店舗が参加したという[viii]

EC大手もソーシャルコマースとの連携を図ろうとしている。Flipkartは今年7月、再生(Refurbish)品販売プラットフォーム「2GUD」にソーシャルコマース機能を導入。複数のインフルエンサーによる商品レビューやキュレーションを掲載し、それら閲覧ビデオからシームレスにEC利用が可能[ix]

Flipkartによると、2018年にサービスを開始した「2GUD」の主な利用者はTier2, 3と呼ばれる中小都市在住で、7割以上を占めるという。その背景として、ECがいきわたらない都市で代替として利用されている[x]

その利点はもう一つ、支払いの統合にあり、親会社であるFlipkartとデジタルペイメントPhonePeを介することで利便性を上げている。こういったデジタルペイメントとの融合で、地方都市や農村部の、コマースにおけるデジタルインクルージョンが加速していくことが期待される[xi]

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