★最高気温52度超、水問題など課題が山積。テクノロジー主導のインドの気候変動レジリエンスを探る★インフォブリッジ通信 Vol. 79

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インドでは今年ニューデリーで史上最高気温となる52.3度を記録しました[i]。5月には数週間にわたって容赦ない熱波が押し寄せ、電力不足による停電、断水なども多発しました。世界中で異常気象の影響を受ける中、インドでは多様な気候帯や地勢を持ち、気候変動への脆弱性の高さにより大きな影響を受けています。

異常気象の弊害として熱波による干ばつや水不足が起こっています。インドは水供給をモンスーンの雨に大きく依存しており、降水量で生活が左右されます。レストランなどのホスピタリティ業界は水不足の影響を大きく受けるセクターであり、バンガロールのレストランでは使っていた井戸が枯渇してしまい、新しい井戸を掘るまで追いやられています。市内には深さ457mの井戸が1万3900基ありますが、そのうち6900基が枯渇している現状です[ii]。一方、チェンナイではレストランなどが営業停止に追い込まれ、学校も休校になるほどの影響が出ています。

それに伴い、レストランでは食器洗いで使った水をトイレ掃除に活用したり、水を提供する際はグラスを一回り小さくしたりするなど、無駄を減らす工夫がなされています。また、食器を使い捨てカトラリーに取り替え、食器洗い用の水を削減しています。バンガロール上下水道局（BWSSB）はエアレーターの設置を義務付けるなど、水の消費量削減を唱っています。

他にも3月にはホテルやレストラン向けに「Green Star Challenge」という節水プログラムが開始されました。これはバンガロール内において99日間で水の自給自足を実現するというもので飲用以外は処理水を使用する、雨水を地下水に再補給するためのシステムを構築する、AIやIoTの技術を導入し、井戸の保全をするなど計5つの取り組みが掲げられました[iii]。基準に応じて節水に取り組むとその施設が持続可能性を持っていることが評価され、「Green Star」認証を受け取ることができます。実際に416軒のアパート、32軒のホテル、16軒の病院などが参加しました[iv]。水不足の影響を抑えようと多くのイニシアチブが行われ、多くの企業や店舗が取り組んでいます。

また、異常気象は労働者不足の問題も引き起こしています。インドでは主に建設業界でエンジニアなどの熟練労働者が不足しています。原因としては、熱波による労働環境の悪化が挙げられ、インドの労働者の75％、3億8000万人が猛暑の中働いていると言われています。2030年までに、熱中症による生産性の低下により世界で8000万人が失業すると予測され、そのうち3400万人がインドで発生する可能性があると考えられています[v]。

また、多くのインド人がインフラ開発に多くの資金をつぎ込む中東に流出していることもインド国内で熟練労働者が不足している原因となっています。中東には約900万人のインド人が移住し、そのうち50～60％が18～30歳の若者で建設業や工場勤務など労働集約的な仕事に就いています。次に多いのは31～45歳の熟練労働者であり、専門性の高い職に就いています[vi]。中東へ労働者が流入する理由として、インドでは高い気温の中長時間働いても給与が低いのに対し、中東諸国の非課税所得に惹かれ、移住する人が多いと考えられます。また、UAEでは2023年から24年にかけてインドからの熟練労働者の需要が25％増加しているなど更なる労働者の流出も考えられます[vii]。

このようなインドの建設業界ではテクノロジー導入による建設効率改善や工期の短縮を試みています。その一つとして3D BIMが用いられ、これが建築物の3Dモデル、設計図、施工のための情報を作成することで建設時間を短縮し、コストを最大20％削減することに貢献しています。他にもIoTやVRが使われるなど、様々なテクノロジーを用いることでワークフロー全体が効率的になり、作業を円滑に進めることが可能になります。これは長期間労働の改善に繋がり、工期の短縮化によって人件費の向上が期待されるでしょう。

このようなテクノロジーの開発、活用を行い、問題解決を図るイニシアチブやスタートアップ企業は多く存在します。気候変動でも水不足、労働者不足、農業問題など多くの弊害が生じる中で最先端のテクノロジーを用いて解決に励んでいます。インフォブリッジでは「Plus91Times」で革新的なスタートアップを数多く取り上げており、早いスピードで成長するインド市場を感じ取ることができます。どのようなスターアップ企業が気候変動に対し取り組んでいるかぜひこちらをご覧ください。

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