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インドの富裕層市場-パンデミックで購買行動が変化、資産額は急速に増加中

Published on
Oct 8, 2021

インド富裕層の状況

100億ルピー超の資産をもつインド人の富裕層をリスト化した「IIFL Wealth Hurun India Rich List 2021」によると、2021年の富裕層の総資産額は、昨年より51%増加、一昨年の増加率20%を大きく上回った。平均資産額も25%増という。リストの総人数は昨年の828名から179名増加し、1,007名と初めて1,000人台を超えた。うち、女性は47名で昨年より7名増となっている[i]

昨年と異なり、総資産額や平均資産額の実数が掲載されていないものの、資産規模による人数の年次推移が掲載されている。全体で179名増加したうち、500億ルピー超の人数は232名から324名と92名増、ビリオネアに至っては58名増と、2020年までの過去数年間は毎年10-20名の増加だったのに比して、大幅層となった。

【100億ルピー超資産を持つインド人の推移】

ここ10年での大きな動きとして、女性の増加(10年前の8人⇒47人)、最年少年齢の低下(同37歳⇒23歳)、大都市集中から中小規模都市への拡大があげられ、2021年はトップ20都市にマハラシュトラ州プネ、グジャラート州ラージコート・スーラト、ハリヤナ州ファリダバード、パンジャブ州ルディアナといったTier2と呼ばれる100-200万人級都市が含まれるようになった点だ、という。

都市別の富裕層人数を見ると、インド人富裕層が最も多く居住する都市はムンバイで355人、全富裕層の35%を占めた。次いでニューデリー、ベンガルール、ハイデラバードなど大都市が続いているが、8位にプネ(31人・10名増)。9位にスーラト(18名・7名増)がランクインしている。このほか、昨年はゼロだったファリダバード、ウダイプル、アグラ、ラクナウ、ナグプールは各5人となっており、在住都市の幅も広がっている。

【富裕層人数都市Top10とその変化】

業界別で最も富裕層が多いのは医薬関連で130人。その総資産額は前年から43%伸びた。次いで化学・石油化学、ソフトウェア・サービス、自動車・自動車部品と続く。この順位は昨年と同様だが、建設・エンジニアリングは、昨年は前年比21%減だったものが67%増と大きく回復、人数もマイナス21からプラス14となった。資産増は、全体平均51%を反映し、どの業界も2ケタ成長となったが、特に化学・石油化学とテキスタイル・アパレル・宝飾品は80-90%と大きな伸びを見せた。この伸びには、急速に資産を増やしたPrince Pipes &Fittings(前年比293%)、セメント製造のDalmia Bharat(同286%)、テキスタイル製造のTrident(同272%)が貢献している。

【業界別富裕層の人数と資産変化】

個人で最も資産総額が多いのは、地場大手コングロマリットReliance Industriesの会長を務めるムケシュ・アンバニ(Mukesh Ambani)ファミリーで7兆1,800億ルピー。10年連続の1位となった。しかしながら、2位のゴータム・アダニ(Gautam Adani)ファミリー、同じくアダニファミリーの8位のVinod Shantilal Adani)は前年比2倍以上の増加など、エネルギー・鉄鋼等の資材価格の上昇等が、資産増に好影響を与えている可能がある。


富裕層向けサービス提供企業

Royal Bombay Yacht Club[ii]

1846年設立の老舗ヨットクラブ。入会費は250万ルピー、年間会員費は6,000ルピー。会員数は1,700人で、女性会員も350人いる(2017年11月時点)。2013年にはユネスコアジア太平洋文化遺産保全賞を受けた。会員向けに大会やクラスを開催している。

Indywood Billionaires Club [iii-1]  [iii-2] [iii-3]

2017年に設立された団体で、海外直接投資によるインドの映画産業振興を目的としている。総資産10億ルピー以上を保有する在外インド人富裕層を対象としたネットワークで、チェンナイ、ハイデラバード、ケララ、カルナタカの南部を中心に活動。設立から1年で中東や欧州に住むインド人富裕層から300億ルピーの資金を調達した。さらに2,000人から100億米ドルの調達を計画している。

2021年2月、ケララ州の海事関連大学AIMRIと共同で、Indywood Billionaires Club Startup Awardsを開催し、スタートアップ育成にも乗り出している。

Plüsch Living [iv-1] [iv-2]

1998年創業。ムンバイに拠点を置き、ドイツの高級ブランドのモジュラーキッチンを輸入販売している。主要取り扱いブランドはPoggenpohl、Gaggenau、Eggersmann、Interlübkeなど。ムンバイ、デリー、ベンガルール、ハイデラバード、コチの5都市にショールームを展開する。

1990年代、インドでハイエンドのラグジュアリーキッチン製品の認知度がないなかで、消費者への啓もう活動から始め、ボリウッド俳優などの顧客を取り込み、少しずつブランド力を強めていった。年間売上は2億5000万ルピー。近年ではさまざまな高級モジュラーキッチンがインドに参入しているものの、パイオニアとして根強い人気を誇る。

現地消費トレンド

新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、富裕層の購買行動にも変化が生じている。インド人富裕層の高級ブランドショッピングは、以前は旅行先、あるいは老舗のブランドショップで行われるのが主流だった。オンラインも利用されてはいたものの、インターネットは情報を収集する手段であり、実際の購買行動は店舗で行われていた。

しかし、ロックダウンによる外出禁止、店舗閉鎖により、高級ブランドを初めてオンライン購入する40歳代の富裕層が急増。120超の外資高級ブランド品を取り扱うEコマースサイトDarveysでは、2020年6月、同サイトを初めて利用する消費者が前年同期比4倍に増えた。Darveysは欧米にある500店舗以上の高級ブティックと提携し、各ブティックの在庫をインドの消費者に提供するプラットフォームで、すべての商品は各ブティックからインドに輸入される。リピーターは20万人以上。

Darveysによれば、靴やベルト、バッグといった服飾雑貨(アクセサリー)の人気が落ち、一方で衣料品、特にアクティブウェアの需要が高まっているという。とりわけ、外出機会の減少から、在宅でも実用的に利用できる商品が売れている。ディワリなどの祝祭や結婚式のシーズン商戦を目前に控え、同社は前年同期比800~1,000%増の売り上げを見込む [v-1] [v-2]

超富裕層(Ultra-High Net Worth Individuals:UHNIs)の間でセカンドハウスの需要が高まりを見せている。米高級不動産Sotheby’s International Realtyによると、インドのUHNIsのうち4分の3がセカンドハウスの購入を考えており、最大5億ルピーの予算を組んでいるという。ロックダウン期間中に100人のUHNIs(総資産額3,000万米ドル以上)に行った調査によるもので、100人のうち67%がコンドミニアム、27%がインドの伝統的な平屋建て邸宅に住んでいる。セカンドハウスの条件として、現在の住居より開放的な空間を有しており、広いリビングルームやベッドルーム、仕事部屋や勉強部屋があること、ジムやレクリエーション活動ができる場所があること、スタッフや従業員が多いことなどが挙げられ、立地的には都市から車で行ける範囲の郊外が求められている。

富裕層向けの高級物件開発を手掛けるデベロッパーは、ロックダウンの最初の日に富裕層が現状よりも広い家の必要性を感じたため、5月の問い合わせが増えたという。

デベロッパー大手のDLFは、必要なサービスが全て敷地内に揃っているゲーテッド・コミュニティの人気の高まりを受け、ロックダウン中に3物件を販売した。販売総額は10億ルピー以上で、他にも販売手続きが進んでいる物件がある。同社によると、ロックダウンで経済は停滞していると言われるが、富裕層においては安心安全な住宅需要が逆に高まっているという。

米不動産サービス会社JLLも、高級物件の購買に新型コロナウイルスによる経済低迷の影響はないとしている。不動産価格は直近では値下がりするものの、2年後には再び上昇すると予想している富裕層が多く、不動産は重要かつ安全な資産であることに変わりはないとする見方が強い[vi]

パンデミックの影響で、富裕層のブランド・商品選定に、見た目やブランド知名度だけでない本質的な価値品質への嗜好、国内ブランド回帰の傾向が出てきた。ステータスを表すだけでなく、その品質と自分のライフスタイルとの関連性を熟考した商品選定に移行が始まりつつある。ファッションに関しても派手で目立つものではなく、控えめでクラシックな、洗練されたものへの嗜好が高くなっているという。また、結婚式や晴れの日の服をインドデザイナーの店で選ぶ、高級スキンケアでは、Forest EssentialsやKAMA Ayurvedaといった、高級アーユルヴェーダブランドを選択し、インド製品の中でもよいものを選ぼう、とする機運が高まっている[vii]

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