インドの生命保険、非生命保険を併せた保険市場規模は2020年には2,800億米ドルまで成長すると見込まれており、生命保険については、今後3-5年間は12-15%の伸長率で推移するといわれている。
総計上収入保険料(Gross written premium)は、2018年度には945億米ドルに到達し、その内訳は生命保険711億米ドル(75.2%)、非生命保険234億米ドル(24.8%)である。[i]
2018年度の非生命保険の市場内訳は、自動車保険が39.4%で最も多く、次いで健康保険が25.2%となっており、これらで非生命保険の約2/3を占める。[ii]
市場規模は年々拡大しているものの、保険加入率は3%台を推移しており、他国と比較すると発展途上の段階である。インド政府は2015年3月に保険会社に対する外資出資上限を26%から49%に引き上げた。これにより、多くの民間企業が参入または出資比率を引き上げており、今後の保険市場は活性化するとみられている。[iii]
現在インドでは24社の生命保険会社と33社の非生命保険会社が事業を展開している。
生命保険24社のうち国営企業はLife Insurance Corporation (LIC)の1社のみとなっている。2018年4月~12月までの保険料シェアは66.5%、民間はHDFC Standardがトップで7%、ほぼ横並びでSBIが6.7%、ICICI Prudentialが4.8%となっている。[iv]
非生命保険会社の、民間の占める割合は、2018年4月~12月までの保険料シェアでみると50.7%、2004年の15%から大きく伸びている。[v]
下記に主要な保険会社および日系保険会社が関わる企業を数社挙げる。
・Life Insurance Corporation (LIC) [vi-1] [vi-2] [vi-2]
インド最大の国営生命保険会社。1956年に当時245あった民間保険会社を統合し、国営企業とした、という経緯を持つ。ムンバイ拠点。創業当時は地域管轄拠点(Zonal Office)5か所、地域拠点(Divisional Office)33か所、営業拠点(Branch Office)212か所だったが、現在は地域管轄拠点8か所、地域拠点113か所、サテライトオフィス1,381か所、自動化オフィス(Computerized Branch Office)2,048か所を展開している。銀行とも提携し、オンラインやATM振込といった保険料徴収サービスも行っている。1957年の総保険料収入は20億ルピーだったが、1969年には5倍の100億ルピーに、1979年に200億ルピーに、1985年に700億ルピーに到達。2005年には創業50年を目前に契約件数が1千万件を突破している。2016年度の新規保険契約件数は2,010万件、収入保険料は2,474億7千万ルピーだった。
・Reliance Nippon Life Insurance Company [vii-1] [vii-2]
2001年AMPサンマール社として設立したムンバイ拠点の民間生命保険会社。2005年に地場大手コングロマリットのリライアンス・グループが買収。2011年10月に日本生命が26%出資し、2015年にさらに出資比率を49%まで引き上げ、社名がReliance Nippon Life Insuranceとなった。初回の出資以降、日本生命からの非常勤取締役および駐在員の派遣によるコーポレートガバナンスの強化、日本式顧客サービスの教育などを行い、2012年には日本式の営業職員制度を導入。2018年3月末時点で拠点数750か所、アドバイザーは6万5千人、保険契約者数は1千万人を超える。
・Star Union Dai-ichi Life Insurance Company [viii-1] [viii-2]
2009年設立、ムンバイ拠点の民間生命保険会社。従業員数は約3千人。顧客数は6,400万人という。第一生命保険、Bank of India、Union Bank of Indiaの3社による合弁企業で出資比率はそれぞれ45.94%、28.96%、25.1%となっている。
・Edelweiss Tokio Life Insurance Company[ix]
2009年設立、ムンバイ拠点の民間生命保険会社。従業員数は1,644 人、拠点数は59か所(2015年3月末日時点)。東京海上ホールディングスの子会社である東京海上日動火災保険とEdelweiss Financial Services(EFSL)との合弁企業。2016年に東京海上日動火災保険の出資比率を49%に引き上げている。2014年度の収入保険料は19億3千万ルピーだった。
・IFFCO-Tokio General Insurance Company [x-1] [x-2]
2000年設立、グルガオン拠点の民間損害保険会社。東京海上ホールディングスの子会社であるトウキョウ・マリン・アジア(TMAsia)とIndian Farmers Fertiliser Cooperative(IFFCO)との合弁企業で、日本の保険グループとして初めてインドの元受損害保険市場に参入した。2016年度の収入保険料は563億ルピー、従業員数は4,238人、拠点数は663か所。2017年6月にTMAsiaの追加出資を発表、出資比率を49%まで引き上げている。
2018年7月には、12言語で展開するカスタマーサービスアプリを発表、同時に同アプリ内で自家用車の事故などによる損害への保険料を30分以内に最大5万ルピー請求できるクイッククレームセトルメント(QCS)のサービス提供も開始した。
・Cholamandalam MS General Insurance Company [xi-1] [xi-2]
2003年設立、チェンナイ拠点の民間損害保険会社。MS&ADインシュアランス・グループの三井住友海上火災保険と地場コングロマリットのムルガッパ・グループの合弁企業。2014年度の収入保険料は189億ルピー、従業員数は3,788人、拠点数は107か所。2015年に三井住友海上火災保険の追加出資を発表、出資比率を40%まで引き上げている。2017年3月には収入保険料313億3,300万るぴーにまで拡大している。
現地消費トレンド
2017年4月に保険規制開発庁(IRDAI)はオンラインの保険販売代理店への規制緩和を発表した。主要変更点は1.オンライン保険販売代理店は全保険商品の取り扱いが可能となる(従来は変額保険の一種であるユニット・リンク保険は販売ができなかった)、2.年間保険料の最大額が5万ルピーから15万ルピーに引き上げられた、3.オンライン販売での利益収入が可能となる、の3点。インドのオンライン保険販売は、表示価格は全ての税金込、ランク付けや加入者の口コミ等の表示は禁止されており、保障内容や保険料の公平な比較が出来るため、利用者も多い。定期保険等、オンライン保険については約9割がオンライン上で比較し購入に至る、という意見もある。[xii]
インドの保険にも多様化、技術革新の波が訪れている。
不動産の開発・販売規制に関する法律〔Real Estate(Regulation and Development)Act, 2016」(通称:RERA)〕が2017年5月に施行されたのち、取得した不動産等の資産向け保険が登場した。2018年7月にはBajaj Allianz General Insuranceがスクールバスでの登下校時の子供向けの損害保険をローンチ。IoTを活用し、バス及び子供の学校IDカードに組み込まれたGPSとビーコンでトラッキングする。こういった新種の保険が登場する中で、上記のIoT導入の他、ブロックチェーンやデジタルの活用が増えている。ICICI Prudencial LifeやHDFC Lifeといった主要保険会社約15社は、IBMとブロックチェーンのソリューションプロバイダーであるCateina Technologiesとのパートナーで医療データのシェアリングコンソーシアムを設立した。またBajaj Allianz GeneralはアマゾンのAlexaをベースにしたチャットボット“BOING”をローンチし、これに続き2018年4月にHDFC ERGO General Insuranceは同じくAlexaベースのAIチャットボット“DIA”を発表し、24時間のお客窓口を提供している。[xiii-1] [xiii-2]