2024年11月、インドオリンピック協会(IOA)は2036年夏季オリンピックの開催国の候補として立候補する意向書をIOCに提出しました。ナレンドラ・モディ首相は2024年8月15日、独立記念日の演説にて「インドでオリンピックが開催されることを夢見ている」と発言し、2036年のオリンピックの開催に備えてグジャラート州アフマダーバードを中心としたインフラ整備を進めています。インド政府はスポーツ振興を国家的な課題として積極的に取り組んでいるようです。
インド政府は、オリンピック招致を通じてスポーツ文化をさらに発展させるべく、いくつかの施策を実施しています。グジャラート州政府は「グジャラート・オリンピック計画・インフラ公社」を新設し、インドが開催権を獲得した場合に備えて、2036年夏季オリンピック開催地となる6つのスポーツ複合施設を建設するために600億ルピーを割り当てました。
また、インド国内のスポーツ振興において、カルナタカ州ヴィジャヤナガルに位置するインスパイア・インスティテュート・オブ・スポーツ(IIS)の存在は欠かせません。民間資金によって運営されるこの施設は、レスリング、ボクシング、柔道、陸上、水泳の5つのオリンピック種目において若手選手の育成を行っています。トレーニング施設では最先端の設備を用いて国際基準のトレーニングを受けることができます。
将来のスポーツ業界を牽引する選手を育成するIISには世界的な機関も注目しており、2024年8月、パリオリンピックの期間中にユナイテッド・ワールド・レスリング(UWW)とIISがレスリング部門の戦略的パートナーシップを締結しました。さらに同年7月にはIISはみずほ銀行と水泳強化プログラムを開始したように、インドのスポーツ振興に日本企業も参入する事例もこれから増えていく可能性もあるでしょう。
カルナタカ州のIISは総合的な施設ですが、インドの各地域には特定のスポーツに特化した施設が点在しています。ハリヤナ州にある「Hau Giri Centre」はレスリングとボクシングに特化し、ヒマーチャル・プラデシュ州ではボクシングに特化、オディシャでは水泳に特化、マニプール州では柔道に特化しています。各州の自然環境や特性を活かしたスポーツ振興が行われ、多くのオリンピック候補生が日々、トレーニングを重ねているようです。
さらに、政府主導の「KheloIndia Program」というプログラムでは、地方から才能ある選手を発掘し、8年間にわたり年間50万ルピーの奨学金やトレーニング施設を提供することで、地域格差を解消しようとしています。民間主導のIISや、政府主導のプログラム、また各州それぞれにあるスポーツ振興策など官民一体となってスポーツ振興を行った結果、国際大会で好成績を収める選手も増えてきています。
2024年のパリオリンピックでは男子やり投げで銀メダル、男子ホッケーで銅メダル、射撃では3種目の銅メダルを獲得しましたが、金メダルを獲得した選手は現れませんでした。しかし、2028年ロサンゼルスオリンピックからインドが得意とする「クリケット」が正式競技として採用されており、インドが金メダルを獲得する可能性は高まっています。
さらにインドオリンピック協会(IOA)は2036年オリンピック開催国となった際にはカバディやヨガ、また日本ではなじみのない「コーコー」といったインドの伝統的なスポーツを正式競技として申請することを明らかにしており、未来のオリンピックにおいてインドが影響を与える可能性は大いにあると言えるでしょう。インドはオリンピックをはじめとするスポーツ業界にてどれだけ好成績を残すことができるでしょうか。今後行われる国際大会でインドの選手に注目してみるのも面白いかもしれません!
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