インドでは近年、急速な都市化と可処分所得の増加によって、都市部を中心に購買力が増加しています。
消費活動の活発化により、様々なタイプの小売店やECなど、提供側も多様化しています。
スーパーマーケットも増加しており、実際に筆者もリンゴから靴下まで、ありとあらゆるものをインドのスーパーマーケットで購入しており、インド生活を大いに支えてもらっています。
今回はインドのスーパーマーケットについて取り上げたいと思います。
Kearney Researchの調査によると、インドの小売市場規模は2019年から2030年にかけて年平均伸長率9%で成長し、2019年の7,790億米ドルから2026年には1兆4,070億米ドル、2030年には1兆8,000億米ドルを超えると予測されています。
現在、インドの中間所得層の世帯数は1億5,800万世帯に達しておりその数は増加傾向にあり消費増に貢献しています。
IBEFのレポートでは2022年には実店舗型小売、そしてEコマースがそれぞれ市場の93%、8%を占め、この割合は、2030年には83%、17%と変化し、Eコマースの比率の上昇が予測されていますが、実際には実店舗とEコマースを掛け合わせたオムニチャネル戦略をとっている小売企業も数多くあります。
特に、インドでモダンリテールと呼ばれる、企業の経営する小売は、多くがECと実店舗の両輪で事業を拡大しています。
IBEFの予測でも、実店舗の市場規模構成比は全体として下がるものの、パパママショップに代表されるトラディショナルリテールの割合は81%から71%と下がる一方、モダンリテールは12%と横ばいとなリ、小売業界でのモダンリテール店舗の位置づけも高まってきています。
スーパーマーケットは、モダンリテールの業態のひとつにあげられますが、その形態は、小規模のミニスーパーから家電や家具など幅広い商品をそろえた「ハイパーマーケット」と呼ばれている大型店舗もあり、バラエティに富んでいます。
小売業界で強い存在感をもつ財閥系グループでは、TATAグループのSTAR Bazaar、RPGグループのSpencer‘s Retail等があげられる他、RelianceグループはReliance SmartやFresh Pickといった多様な業態を展開する中、2020年にFutureグループの保有していたBig Bazarを買収し、その規模を拡大しています。
これらはインドの主要都市を中心に、様々な州に展開をしています。
特にRelianceグループの店舗数は数多く、SmartBazaar(旧Big Bazaar)はインド国内の400以上の都市で1,500店舗以上、Reliance Freshは2,700店舗にものぼります。
ちなみに日本の大手スーパーマーケットのマックスバリューは日本全国の系列店舗を合わせるとおよそ700店舗になるそうです。
日本の約9倍の国土と、約14倍の人口を擁するインドはスーパーマーケットの展開規模も相当大きくなります。
近年著しく業績を伸ばしているスーパーも複数見られ、Vishal Mega Martは昨年12月にIPOを果たし、発行価格に対し33%を超えるプレミアムがついたことが報道されています。
またハイパーマーケットチェーンD-Martを運営するAvenueSupermartsは第三四半期売上が前年同期比17%増、過去最大の売上を記録したとの発表を受け、株価が上昇しています。
それでは実際の店舗に行ってみましょう。
今回訪れたのはニューデリーSelect City Mall内にあるmodern bazaarです。
modern bazaarは輸入食品の品ぞろえを強みとする、上位中間層以上を狙ったスーパーマーケットです。
父親の経営する食料品店から始まり、現在はデリーNCRに21店舗を展開しています。
2023年の年間売上高は20億ルピーを超え、勢いを増しているスーパーマーケットのひとつです[1]。
高級感のある内装で、モール内の店舗のため、コンパクトに様々な商品が陳列されていました。
ニューデリーにある通常のスーパーマーケットでは米や豆類の量り売りコーナーがありますが、modernbazaarでは既にパックされて販売されていました。
またナッツもガラスケース内に保管してあるなど陳列方法からも高級感が伝わります。
またインドのスーパーマーケットでは珍しく惣菜コーナーもありました。
このmodern bazaarは日本でいうところの「デパ地下」のような雰囲気を持っていると言えそうです。
筆者が驚いたのは、品揃えの豊富さです。
パスタや調味料など、インド国内のブランドから欧米、東アジアのブランドまで多様な商品を取り揃えていました。
特に飲料品のコーナーは筆者がニューデリーで見た中で最も品ぞろえが豊富でした。
この店舗の品揃えを見る限り、ニューデリーに住みながらも日本と近い生活を過ごすことができそうです。
インスタント麺のコーナーではインドのブランドと国際的なブランドが別れて配置されており、国際的なブランドが並ぶ棚では日本で馴染みのあるカップヌードルが陳列されていました!
インド日清の製品で、バラエティは複数あり、「シーフード カリー」や「デリシャス マサラ」などインドならではのフレーバー展開となっています。
カップヌードルの下段には、ネパールブランドの2PMが、また上段には韓国のプルダック麺も並んでおり、インスタント麺だけでもかなりの棚面積を占めていました。
インドのスーパーマーケット市場は、高級路線から格安路線など、店舗のスタイルは様々です。
また地域によって食生活が異なるため、他都市では、今回訪れた店舗と異なる品揃えが見られるのではないでしょうか。
みなさまがインドに来られた際はぜひスーパーマーケットを訪れてみて、インドの生活に触れてみてはいかがでしょうか。
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