コラム

モビリティ・テック ー EV配車やBaaSなど、テクノロジーを駆使した新サービスが台頭

Published on
Feb 3, 2025

žEV化やラストマイル輸送など、利便性や環境配慮といった観点からも、多様なモビリティ・テックを活用したサービスやソリューションが増加している。コンサルティング企業Praxis Global Allianceによる「ELECTRIFY30: TheFuture of Mobility(2024年8月)」によると、インドのモビリティ・エコシステムの市場規模は2023年度の6,510億米ドルから年平均成長率12%で成長し、2029年度には1兆2,570億米ドルに達すると予測されている[i]。旅客輸送、ロジスティックスといった輸送・物流サービスが台頭しており、今後もこれらを中心に伸びていくという予測だ。

 

ž   モビリティ・エコシステム全体における現在のEモビリティの普及率は5%(340億米ドル)に過ぎないが、2029年度までに20%にまで増加し2,380億米ドルの市場規模に成長する見込みだ。EVの販売台数は2021年以降二輪を中心に二字曲線的に増加しており、それに伴いバッテリー関連のソリューションや、充電ステーション、スワップバッテリーサービスなどのBaaS(バッテリー・アズ・ア・サービス)等のビジネスが拡大している。

 

ž   インドの旅客輸送市場については2023年度に1,850億米ドルと評価され、2029年度には総額3,220億米ドルに達すると予想されている。現在、旅客輸送市場におけるEVの普及率は4%だが、2029年度には14%を占めるまでに成長する見込みだ。

ž   2023年度の内訳をみると、都市間・都市内バス通勤が40%と最も高いシェアを占め、次いで都市間・都市内四輪車(タクシー)が34%で続く。これら2セグメントを中心に成長が続くが、EV化については四輪タクシーが先行、アグリゲーター・プラットフォーム事業者が急速にEVに移行しており、最も成長するカテゴリーかつEV化も進むセグメントとなっている

ž   都市内旅客輸送については、大都市を中心に様々な交通手段が提供されており、マルチモーダル化が進んでいる。2023年1月にデリー、ムンバイ、ハイデラバード、ベンガルール4都市で行った消費者調査(Statistaより引用)によると、回答者の半数近くが通勤時にメトロとバス、リキシャーと複数の交通手段を組み合わせて利用しており[1]、都市部でのマルチモーダル交通利用が一般的になっていることがうかがえる。既に欠かせない輸送手段の一つとなっているタクシーアプリの利用については、主な選定理由が「低料金」から「安全性」と「利便性」に変化しており、利用意識がよりサービス品質に以降してきていることがうかがえる[ii]。

ž   企業は消費者のニーズを敏感に捉え、テクノロジーを使い効率化することで競争力を上げている。市場調査会社BlueWeave Consultingのレポートによると、インドのモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)市場規模は、2023年に8億7,000万米ドル、2030年までに年平均成長率32%強と、驚異的なスピードで成長すると予測している。ライドヘイリング、カーシェアリング、マイクロモビリティ、バスシェアリング、列車サービス等、それぞれが効率化や利便性の向上を推進するとともに、これら複数サービスを繋ぎマルチモーダルオプションを実現するテクノロジーが、さらなる発展のカギとなる。複雑な要素をテクノロジーで解決するためにスタートアップも含めしのぎを削っている[iii]。以下に、テクノロジーや環境を志向し、台頭してきているモビリティ・テックスタートアップをあげる。

 

BluSmartMobility[iv]  https://blu-smart.com/

ž   2019年に設立された100%EV配車サービスのスタートアップ。ドライバーのキャンセルゼロ、均一で透明な事前価格設定、時間通りの到着、といった高品質サービスに加え、ユーザーが乗車するたびに二酸化炭素排出の削減量を表示するトラッカーなどで差別化している。

ž   GoogleのOnDemand Rides and Deliveriesの使用により、より高度なデータと機能にアクセスすることで、正確な到着予定時刻、距離、ルート、位置情報を取得し、効率的なシステム開発に積極的に投資している。

ž   2024年8月には、「乗車リクエストに車両を割り当てるシステムと方法」で米国特許商標庁(USPTO)から特許を取得した。このシステムにより、リアルタイムで需要を予測し、ドライバーを適切な場所に適切なタイミングで配置し、ピックアップポイントに定刻通りに到着させることができる。車両の充電レベルと充電ステーションの空き状況もマッチングすることができ、充電切れの心配もない。利用状況などのデータ分析による的確な価格戦略も可能だ。2024年7月には、2,400万米ドルの資金を調達し、車両とEV充電インフラを拡充する予定だ。ドバイやUAEにも進出しており、EV配車に特化したテクノロジーを駆使し事業拡大を目指している。

 

Rapido[v] https://rapido.bike/

ž   2015年にバイクタクシープラットフォームとしてスタート、2024年7月には1億2,000万米ドルの資金を調達し、翌月にユニコーン入りを果たした。同社はパンデミック時の収益減を補うべく二輪から三輪のオートリキシャー、四輪タクシーと取扱い車両を拡大した他、荷物の集配サービス、広告やドライバーパートナー向けのサポートサービスなど、新たな収入源も追加し、事業を拡大してきた。

ž   現在は100以上の都市へ進出し、毎日200万回以上の乗車を記録しているが、その大部分は二輪車で、インドのバイクタクシー市場の半分以上のシェアを占めると言われている。

ž   特徴的なのは、ドライバー向けのサブスクリプションモデルを導入したことだ。通常、ドライバーは旅客の乗車ごとに運営会社に手数料を支払う仕組みとなっているが、定額のサブスクリプション料金を支払うことで、Rapidoの顧客獲得サービスにいつでもアクセス可能となる。これにより、ドライバーは1日に何人乗せても支払う金額は一定となる。

 

BatterySmart (Upgrid Solutions)[vi]  https://www.batterysmart.in/

ž   2019年に設立されたスタートアップで、EV二輪および三輪のスワップバッテリーサービスを提供する。インドの30以上の都市に1,100カ所のスワップステーションを展開し、累計交換件数は4,000万件を突破している。

ž   半径1kmで待ち時間なく交換できる高密度のバッテリースワップネットワークを構築しており、バッテリー交換はわずか2分。高額なバッテリー費用を含まない車両のため、ドライバーは初期費用を最大40%削減できるほか、充電のアイドルタイムなしに長時間走行も可能となる。2024年初めにはインドの電動スクータープロバイダーQuantum Energyと提携したことで、Quantum Energyのスクーターバッテリーを、同社のパワーパックに切り替えた。

ž   スワップステーションのネットワーク構築に関しては、インドの中小企業が保有する既存のインフラを活用し、ノウハウを提供するフランチャイズモデルをとっているため、迅速に設置することができる。また、個人でも最低10個のバッテリー購入と登録料を支払えばフランチャイジー申し込みが可能と、加入ハードルも低く設定されている。2024年6月には、インドのEV二輪・三輪の小売チェーンであるElectro Rideとの提携により今後5年間でインド全土の2,500か所にスワップステーションを設置することを発表した。同月には、パナソニックが、SBIインベストメントと共同で運営するコーポレートベンチャーキャピタルファンドを通じ、同社への出資を決定している。

 

[1] https://www.statista.com/statistics/1424549/india-preferred-mode-of-transit-by-commuters/

 

[i] https://www.praxisga.com/PraxisgaImages/ReportImg/electrify30-the-future-of-mobility-Report-3.pdf(27ページ)

https://www.praxisga.com/reports-and-publications/mobility-energy-and-transportation/electrify30-the-future-of-mobilityよりDL(ファイル名「ELECTRIFY30: The Future of Mobility」)

[ii] https://www.statista.com/statistics/1060633/india-reasons-to-use-app-based-taxi-services/

[iii] https://www.blueweaveconsulting.com/report/india-mobility-as-a-service-market

[iv] https://indianstartupnews.com/news/ola-rival-blusmart-secures-us-patent-for-its-allocation-system-for-electric-mobility-6845475

https://mystartupworld.com/blusmart-revolutionizing-sustainable-ride-hailing-with-electric-vehicles/

https://www.mercomindia.com/blusmart-raises-%E2%82%B92-billion-to-expand-ev-charging-network

https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/blusmart-case-study/

[v] https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/rapido-goes-past-1-billion-gmv-mark/articleshow/112384256.cms?from=mdr

https://getnews.jp/archives/3490389

https://www.autocarpro.in/news/revenue-growth-in-auto-component-industry-to-moderate-to-5-7-in-fy2025-icra-119179

[vi] https://www.motorindiaonline.in/battery-smart-achieves-milestone-of-1-lakh-daily-swaps/

https://getnews.jp/archives/3488113

https://www.electrive.com/2024/06/25/electro-ride-battery-smart-partner-up-on-battery-swapping-in-india/

https://news.panasonic.com/jp/press/jn240628-1

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